平成18年7月21日(金)〜7月22日(土)

昨年の7月24日の体感記から早一年が過ぎました。皆様の中にはあの公演の後、実際に「古事記」を手に取られた方もいらしたのではないでしょうか?実は、私もその中の一人なんです・・・学生時代、古事記の勉強をしてきた神職の私達さえそんな小さな変化をもたらす事が「日本神話への誘い」を行う大きな答えであり、役割だと実感しています。
前回、体感記の最後に「では、次回の開催まで」と書いたものの、こんなにも早く二回目の公演を開催出来るなんて思ってもいませんでした。また、楽しい宴会が・・・いやいや、前回のような壮大な舞台を堪能できることに驚きと喜びが込み上げてきました。
子供の頃、誰でも聞いたことのある日本神話。今では耳にする機会も段々と失われています。日本神話には、私たちの祖先から伝えられてきた日本人の豊かな心、私達に伝えたいメッセージが溢れるほど詰まっています。しかし、難しく触れがたいイメージは簡単に拭い去ることは出来ません。そのイメージを払拭しようと行動を起こされたのが浅野さんでした。そして、この「日本神話への誘い」がスタートを切ったのです。
浅野さんの、壮大で奥深く、触れがたい様に思える古事記の秘められた素晴らしさを次世代に伝えたいとの強い思いは、盛岡八幡宮第一回目の公演からと言うより、伊勢神宮内宮での初めての公演から全く変わっていませんでした。平成15年に始まり、これまで公演した神社は28社を数えます。私達はその思いを、より強く輝かせ、一人でも多くの皆様に日本神話を語り継ぐべく、共にその思いを一つにし今回の第二回目の公演を行うことになりました。
しかし、二回目ともなるとそれなりのリスクを背負います。前回ほど来場して頂けないのではないかと思い、当初は800名程の規模に縮小し開催を予定していました。ところが受付を始めてみると、いつになっても申込が止むことはなく、ついには1700名を越える方々からご応募がありました。前回と同じように全国各地からご応募頂き、こんなにも多くの方々がこの公演を心待ちにしてくれていたんだと感極まりました。
しかし、当日の7月22日、岩手県内はまだ梅雨の最中です。まさに滝の如く・・・雨が降ることも予想しておりましたが、これほどまでに本降りになるとは誰も思っていません。「この雨では誰も来ないのでは」と言う不安がスタッフの頭をよぎりました。
憂鬱な思いを表すかのような雨が降り仕切る中、そんな思いはすぐに打ち消されました。開演2時間前、受付前には心待ちにしていた多くの皆様が、傘に合羽を羽織り、開演の時を今か今かと待っていました。その光景を見た瞬間、スタッフ全員が安堵の胸を撫で下ろし、同時に感謝の気持ちが込み上げて来ました。臨時に合羽販売テントも設置され、開演前には美味しいラーメン店に並ぶかのような長蛇の列が出来ていました。
そして開演、今回の演目は「天孫降臨と国譲り〜天から遣わされし者たちの思い〜」、「コノハナサクヤ姫とオオヤマツミ」の二話を披露頂きました。浅野さん自身が「会場となった神社はどこもシーンと静まり返り、お客さんは前かがみになって私の語りに耳を傾けてくださいました。」と言うように、会場が変っても、どれだけ雨が降っていようとその姿は変わりはありません。約2時間弱、決して短い時間ではありません。大雨の中、全身がずぶ濡れになりながらも誰一人席を立つ人は居ません。それほど来ていただいた方々全員が浅野さんの日本神話の語りに神経を集中させ聞き入っていました。
幻想的にライトアップされた社殿、神域を背にし、雨空を吹き払うかのように、力強く響き渡る浅野さんの声。その声を一段と引き立たせるバイオリンやパーカッションの音色。誰もが圧倒され、古事記に象られた歴史の重みや悠久の時間の流れを感じる事が出来たはずです。
雨の中お越し頂いた方々は約1100名、スタッフ総勢100名。八幡大神様のご加護の元、多くの方々のお力をお借りして、この舞台は成功へと導かれました。
その中で「日本神話への誘い」にご来場頂いた方々に、神話というもの、神社というもの、日本人の心というもの、そして私たちスタッフの思いを少しでも感じて頂ければ、この二回の公演は成功と言えるのではないでしょうか。
実際に公演が終わり、「神話の魅力を感じた」、「解りやすくて良かった」、「聞きやすくて、情景が目に浮かんだ」とのお声を頂き、日本神話を少しでも身近に感じてもらえたと実感することが出来ました。
浅野さんを始め、スタッフの皆さん、ご来場頂いた皆さん、お申込を頂いた皆さん、この舞台に関わられたすべての方々に心より御礼を申し上げます。大雨の中、本当にお疲れ様でした。お帰りになった後、風邪など引かれなかったでしょうか?
浅野さんの思い、私達の思い、そしてお越し頂いた方々の一つ一つの思い、それらが一つになったとき日本文化の素晴らしさを次世代へ伝えていく大きな道標になるはずです。
そして、この道標が岩手の盛岡の地から日本全国へ繋がることを期待し、また日本神話が多くの世代に語り継がれて行くことを願い、第二回の「日本神話への誘い」を終演とさせて頂きます。

セイケン
写真提供/オフィス・ジゴロ
第1回の「日本神話への誘い」を読む



















浅野温子語り舞台
「日本神話への誘い」体感記



平成17年7月23日(土)〜7月24日(日)
7月24日、女優の浅野温子さんによる古事記を独自に脚色した日本神話の語り舞台「日本神話への誘い」が行われました。いつもの神社はその日、一大公演会場に様変わり。境内には2000人分の客席が作られ、神殿はライトアップで神秘的に浮かびあがる舞台へ。そこから浅野温子さんの日本古来の世界へ誘う語りが響き渡り、忘れられぬ一夜になりました。この日の講演の準備から会場の設営まで携わった、当宮神職のセイケンがその模様をレポートします。
 

夏の暑さも一層厳しくなる7月。

その暑さにも勝る熱い思いを抱いた一人の女性がが、この盛岡の地に降り立ちました・・・
「浅野温子」
彼女は「私たちが子供のころは、神話や民話って生活の中に自然に溶け込んでいたものだった。
そういった日本の財産がどんどん失われていくのは悲しいよねえ」と言うように、日本に古来から伝えられている、神話や説話が忘れられようとしている現状を憂い、その原点である「古事記」に秘められた、日本人が古来より持ち続けている麗しく美しい心を、後世に語り継いでいくために語り舞台に挑戦する事を決心したと言う。
そして平成15年から、伊勢神宮を皮切りに「日本神話への誘い」と題し、日本人の持つ親から子への気持ち、家族のつながりなど普遍的な愛情をやさしくわかりやすく語ることによって、特に若い世代の人達に、祖先がこんなに素晴らしい神話を財産として残してくれた事、そしてその神話の楽しさを伝えたいとの想いで、講演を続けています。
私達の住む豊かな自然に恵まれた日本には、自然・祖先を崇める我国固有の思いが生まれました。
その思いを氏子、崇敬者の人達へ伝えていく役割を担っている神職としての私達と、「古事記」に描かれている日本人の心を伝えようとしている浅野さんとが一心になるにはさほど時間は必要としませんでした。それにより盛岡八幡宮公演が実現したわけです。(ほんの少しの遊び心と共に・・・)


7月23日は一段と暑い日でした。

八幡宮関係のスタッフが一堂に会し、明日に控えた本番に向けて打ち合わせを行いました。
皆さんとても真剣な面持ちでした。
まぁ、このような大がかりな舞台など、誰一人経験した事などないはず。
加えて、この為に前々から細かく打ち合わせを行っていた職員ですら不安と緊張でいっぱいになっているのですから・・・(余裕なのは場馴れしている会場設営の山田プランニングさんぐらいです)
打ち合わせが終わり、スタッフ総勢80名。
夏の暑い日差しが照りつける中、会場準備に取り掛かりました。
予想来客数2000人近い会場を作り上げるのは一苦労。境内にも限りがあります、椅子の角度やら、どうしたら来て頂いた皆さんが見やすいのだろうと試行錯誤の設営・・・ついには宮司さんまで椅子を並べる始末。これが本当の「てんやわんや」と言う事に今更ながら気付いた今日この頃です。
と、そうこうしている間に、ついにお待ちかねの「オフィスジゴロ」のスタッフさんが到着しました。これを契機に会場設営は進む進む。さすがとしか言いえません。一糸乱れぬ手際の良さ、急造スタッフとは訳が違います。まさに「プロ」。
お陰様で会場設営も無事終了し、照明を取り付ける足場から見下ろすとまさに圧巻、きれいに並んだパイプ椅子、「これだけ境内に観客が入るのか」と目を疑いました。(足も竦みましたけど・・・)

午後3時より奉告祭を執り行う。

御神前で榊舞、納曽利、雅楽の音が奏でられる厳粛な雰囲気の中、開演にあたっての奉告祭を執り行い、ついにリハーサルを迎えます。
私達スタッフだけという贅沢な空間。静けさの中、凛とした空気に響き渡る浅野氏の声。
雰囲気に圧倒され、暑いというのに身震いしたことを今でも忘れません。
それまで騒々しくしていたものが、嘘のように静まり返りました。
スタッフの誰一人一言も発しません。
話すことによって、こんなにも人を引きつけることが出来るなんて、日常で祝詞を奏上し、一般の人達に話す機会の多い私達にはとても参考になるものでした。
こうして、リハーサルを含む会場設営は無事に終了し、スタッフ一同が楽しみにしている第一回懇親会に移るわけですが、内容は書くまでもなく大盛況の内に滞りなく飲み治めました。(皆さん、たまには次の日の事を考えて飲みましょう・・・)

そして本番当日の24日。

また暑いのかと、二日酔いの目を擦りながら外へ出てみると、なんとも期待外れの爽やかな陽の光。
とは言え、絶好の語り舞台日和。朝から舞台の最終チェックに入り、スタッフも最後の打ち合わせです。
駐車場、場外・場内警備、受付等それぞれが自分の役割を確認し、来て頂ける皆様を気持ちよくお迎え出来るように、そしてこの語り舞台を成功させるために。100名を超えるスタッフの気持ちは一つ、ここまで来たら成功させるしかありません。

 午後5時を過ぎて不安と緊張、早く観賞して頂きたいといった期待と興奮を抑えながらスタッフが配置に付きました。
場外に並んでいる多くの皆様も開演の時を待ち侘びています。
入れたいけど入れられない、入りたいけど入れない。こんなスタッフと皆様の葛藤(笑)が30分は続き、午後6時15分、ついにその時は来ました。
待っていた人達が雪崩のように受付に押し寄せます。「そんなに慌てなくても席は有りますから!」と言っても聞かず、「困ったなぁ」と思いながらも、こんなに楽しみに待っていてくれたんだと嬉しさも一入でした。
受付を通り抜け、スタッフの案内で席に着きます。不慣れな案内で、ご迷惑をお掛けしたと思いつつも、終わってみればしてやったりの満足感を覚えた会場整理係だったみたいです。
後のアンケートで判明する事ですが、あまり宜しくないとのご意見も頂いたみたいですので、有り難く受け止め、また次回の課題として頑張りましょう!

ついに午後7時開演の時を迎えます。

これがリハーサルの時と全く一緒。始まる迄はざわついていたのが、始まった途端急に静かになるんです。幼稚園児のお遊戯会の父兄を見ているようでした。まぁ、人の事をいえる立場じゃないんですが、実際に前の日にそうなってますし・・・ともあれ、緊張を押し殺した宮司さんの挨拶を皮切りに無事に開演したわけです。
そしてこの時、引き込まれるって言うのはこういう事を言うのだろうと、改めて実感することになります。
誰一人視線を外す人はいません。
そこで語られる日本神話に皆さん耳がダンボになってました(笑)。
浅野さんが「会場となった神社はどこもシーンと静まり返り、お客さんは前かがみになって私の語りに耳を傾けてくださいました。」と言うように、会場が変っても真剣に聞こうとする姿は一緒なんですね。
公演時間は決して短い時間ではないんです、1時間半から2時間弱。その時間中、それだけの雰囲気を作り上げる浅野さんの力に脱帽と言うか感動と言うか、表現しようがないほど素晴らしいんです!
日本神話の歴史の重みや時間の流れを、そしてその日本神話の持つ温かさに優しく包まれながら、風や空気、そこにあるすべてのものを感じ取る事が出来ました。   
また、古来から物語はこうやって語られ伝えられ、ある意味今回の「日本神話への誘い」によって「語り」というものの原点をまざまざと見せつけられた気がします。

日本には素敵な物語がたくさんあります。

その中でも日本神話は時代を越えて残したい大切な物語です。
浅野さんは「同じ神話を語っても神社が変われば、舞台は完璧に違うものとなります。その違いに私自身とても驚きましたし、改めて神社のすごさ、大きさ、大切さを実感しました。
だからこそ、全国の八百万すべての神社を回って、日本神話を語り続けていきたいと思っています。」と、一つのライフワークとしてこの公演を続けていかれるそうです。
本来、その役割を担っているのは私達です。
この公演に共感を覚えないはずはありません。
日本神話には、ロマンとファンタジーが沢山です。
そして、人間の生き方、社会のルールなど、大人ばかりでなく未来ある子どもたちに伝えたいメッセージが溢れるほど詰まっています。
裏切りや失望も物語として素敵に書かれ、人間ぽい感情がストレートに表現されています。
実に壮大で奥深く、一見は触れがたいものかもしれませんが、子供のころに読み語られた絵本とは大きく違い、私たちの祖先から伝えられてきた素晴らしい日本という国、日本人の豊かな心が描かれています。


今回の「日本神話への誘い」に参加された皆さんは、何を感じ、何を思ったのでしょうか。
一人一人の思いは様々だと思います。
ただ、この舞台を通して、神話というもの、神社というもの、日本人の心というものを一欠片でも感じて頂ければ、この舞台の意味がより一層増す事になるのではないでしょうか。
浅野さんの思い、私達の思い、そして来てくれて下さった方々の一つ一つの思い、それらが一つになったとき日本文化の素晴らしさをを次世代へ伝えていく為の大きな糧になるはずです。
このことを胸に、私達に与えられた使命をもう一度見つめ直す良いきっかけとなったのではないかと実感しています。
最後に、浅野温子さん、オフィスジゴロのスタッフの皆さん、この舞台を準備の時点から支えて頂いた岩手県神道青年会を初めとする多くの方々に御礼を申し上げます。
本当に多くの方々に御協力を頂いて、この舞台は完成にこぎ着けました。今では、もう二ヶ月も前の話となり少しずつ忘れられようとしている中で、この文章を残す事で少しでもあの日の思いが皆さんの心の中に蘇ればと思っております。
では、次回の開催の時まで。本当に皆様お疲れ様でした。

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